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 次の日、ケイヤは職場に小瓶を一つ、持っていった。薄水色の瓶で、綿棒と同じくらいの高さしかない。ガラスがかなり分厚いのだろう、中の液体はほんの少ししか入っていない。 「これを誰かに飲ませればいいってことだけど……」  ガラスを揺らすたび液体が動く。水のようだが飲んでみる勇気はない。中のものは、ケイヤの溢れ出した結婚運が濃縮されたものということらしかった。  これを使って効果を確かめてはいかがですか? 占い師からそう言われ、半信半疑で小瓶を受け取ったものの、今日の朝にはそれが本物であると確信した。 「蓋をしない状態で近くに置いておいてください」とのことなので布団の近くに置いて寝たところ、朝には昨日まで空だった中に液体がたまっていた。  結露してできたにしては量が多い。それにそんな時期でもない。 「実験するにも、ちょうどいい奴っているのかな」  中は結婚運だ。とすると、誰か彼女か彼氏持ちであり、かつ結婚を考えている人がいい。そしてなにより重要なのは、ケイヤの知り合いで飲み物に異物を混入できる仲であるということだ。 (この会社でそんなことできるやつ、何人いることか)  手始めに同僚に何人か話をきいてみるものの、対象者は見つからなかった。普段からコミュニケーションをとっておいてよかったと、今さらながらに思う。昨今、彼氏彼女いるの、なんて気軽にきける時代でもないのだ。下手するとセクハラで、そちらが原因で解雇しかねない。  同僚が全滅すると、つぎは後輩だった。さすがに異性の後輩にきくのはためらわれたので同性の、それもそういう話題に抵抗がない奴だけをターゲットに選ぶ。  さすがに少し怪訝な顔をされたものの、やはりこちらも普段のコミュニケーションが得をしたようですんなりと答えてくれる。  そしてついに、条件に当てはまる奴を見つけることができたのだ。
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