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 それから二日と立たないうちに、ケイヤはあの占い師の元を訪れていた。 「あの壺をください」 「……お客さん、うちは壺屋じゃないんですが」  そんなことはわかっている。  ケイヤは丸椅子に腰かけると財布から三千円と、さらにあの小瓶を差し出す。 「壺を欲しがるということは、誰か結婚でもしましたか?」 「あの液体を飲ませた次の日には、効果がでたよ」  呼び出しから次の日の昼、今度はケイヤが呼び出された。腹でも下し、治療費でも請求されるかとひやひやしたが、その日初めてみた彼の顔は、キラキラと輝いていた。 「先輩、オレ、昨日プロポーズしました!」  なんでもケイヤの結婚の相談にのるうちに、さらにその考えが強まっていったらしい。そしてその日の夜。抑えきれなくなってプロポーズしたのだとか。 「というわけで効果はわかった。ぜひとも、あの壺を買おう。金なら用意した」  現金で五万を出すと、占い師はそれを数えもせず金庫にしまった。そして、机の下から壺を取り出す。 「あー、この壺……ありがたや、ありがたや」 「拝むのはまだ早いですよ」 「これはどう使えばいいんだ?」  使い方はあの小瓶と同じだった。部屋のどこかにこれを置いておくだけでいいという。するとなかに液体がたまるので、満タンになったら蓋をして暗所に保管する。そして来るときにそれを接種すればいいのだという。 「蓋をするとそれまでの結婚運が保存されるため、保管するときは必ずしてください。逆に言うと、それまでは蓋をしないでください。蒸発もしませんし、中に虫が入ることもありませんので」 「どれくらいで満タンになるんだ?」 「あなたほどの運でしたら、半年程度ではないでしょうか?」 「それで、これはいつが使い時なんだ?」 「一年程度、つまり満杯になってからからに半年は待っていただくことになるかと思います。またくれば占ってあげますが、一週間やそこらで変わるものではないため、すぐに来ても結果は変わりません」 「なるほど。了解」 「それと、これはサービスです」 「なんだ?」 「その壺、持ち帰るのは大変でしょう。住所を教えていただければ発送しますよ」
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