ーー 3 ーー

2/5
前へ
/12ページ
次へ
 壺が届いたその日からそれを部屋に置き、蓋はなくさないよう壺の壁面にテープで貼り付けておく。神棚なんてものはないし、あっても落ちて割れたら嫌なので床に置いておいた。  一日、二日と経つごとに少しずつ液体が溜まっていくのがわかる。 しかし、まだ底面を覆うまでも行かない量なので少し寂しい。 (そういえば……)  ケイヤはふと思い出すと、洗面所からバケツを持ってきた。中にはあの小瓶に入っていた水が、少し貯めてある。蒸発しないというのは本当のようで、中の水は少しも減ってはいなかった。 (まあ、増えてもいないけど)  やはりあの小瓶かこの壺でなければダメなのだろう。慎重に中の水を注ぎ込む。少し増えた水はやっと底を覆う程度まで溜まった。 「あー、溜まりきるのが待ち遠しいなあ!」  それからというもの、ケイヤはかかさず中の様子を観察した。  一か月も経てば目に見えて中に入っている液体の量が増えているのがわかったし、三か月ほどで半分ほどになった。量から考えれば占い師の言う通り半年で満杯になるだろう。  そしてちょうど壺が満杯になるころ、カイヤマは結婚式をあげた。ケイヤもそれに呼ばれ、初めてスピーチを経験した。かなり大変だったが、いい経験になった。式自体も良いもので、二人が幸せそうなのがなによりの報告だ。  なぜならば、二人が幸せであれがあるほど、この液体にものすごい効果があるということだからだ。嫌でも期待してしまう。  これまでの半年、出会いがまったくないというのも、ケイヤは苦じゃなかった。むしろあの占い師のいうことが本当だということが証明されていくようで、誇らしい気さえしていた。  そして、待ちに待った一年後、ケイヤはあの占い師の元を訪れていた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加