【 プロローグ:ふたりの距離 】

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【 プロローグ:ふたりの距離 】

 何だろうこの違和感。  そして、この緊張感。  今、30人以上の人間が僕のことを見ている。  しかも、全員知らない人だ。  僕はこの狭い教室の一番前で、今、無防備に何の武器も持たず立たされているのだ。  拳を握り、手の平に『こじゃんと(たくさん)』汗をかきながら……。  静まり返った教室で、一度、喉の奥でゴクリと音を立てる。  皆にも聞こえてしまっただろうか。  そして、この日のために必死に覚え、練習してきた標準語で、僕は挨拶をした。 「えっと……、南出 勇気(みなみで ゆうき)です。四国の高知からこちらに転校して来ました。どうぞよろしくお願いします」  今、イントネーションおかしくはなかったか?  土佐弁、大丈夫だっただろうか……。  そんなことを考えながら、お辞儀をして10秒数える……。  確かそんなのをネットで見た気がする。  あれは、謝罪の時だったか……?  次、顔を上げるのが怖い。  僕は東京が、苦手だ……。
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