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 ついさっきラインの着信音で目を覚ましてすぐに、空の機嫌を確かめたら晴れでもないし雨でもない。 薄曇りって感じだった。 とにかくそんな空模様に、起き抜けで半覚醒状態の脳みそは憂鬱を選択した。 だからピアスを開けた。そんな気分になったからだ。  「ママか」 ラインの相手はママだった。 ママの誕生日のお祝いの件だったので、ちゃんと土曜のお昼には実家に帰ると返信した。 「あと二日ね、帰りにプレゼント買いに行かなきゃ」 週末の事を考えていると再び着信。 そこには甘えるような仕草の犬のスタンプと、早く会いたいという一言が添えられていた。 「もう、ママったら分かってるって」 そんなことを呟きながら、ガラス製のローテーブルの上にある血の付いたティッシュを片付ける。 私はピアスを開けるときに保冷材で冷やしたりしない、血と痛みが伴わなければピアスを空ける意味なんてないと思ってる。 自分の意思で針を刺すのは儀式なのだから。 コーヒーを淹れて、最近百均で買ったお皿にクッキーを三枚乗せる。これで朝食の準備は終わり。 ベッドを背もたれにして、だらだらとスマホで動画のサムネイルをスクロールする。 結局いつもみている都市伝説系チャンネルの新規投稿に行きついた。 一時間ほど時間を食い潰してから、さっき開けた穴に新しいピアスを通す。 ほぼ視界のない左側。 そこにちゃんと世界が存在することを確かめるように、ゆっくりと痛みが通る感覚を噛みしめながら嵌めていく。 耳に収まったピアスは一年前に十個まとめて同じデザインの物を買ったものだ。 単純計算で後三か所は開けられるけど、このくらいの方がバランス的に気持ちが良い気もする。 そんなことを思いながら鏡で確認するとクラシックな黒フレームの眼鏡をかけ、後ろを刈り上げたおかっぱ髪の自分の顔がうつる。 少し濁りのある目とおちょぼ口、相変わらず好ましくない顔が憮然とした表情をつくっていた。 「可愛くない・・・」
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