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 後で分かったことだけど、紗英ママから聞いた事件の話は簡略な経緯くらいだったらしい。 私が大学に入ってまだ間もない頃、あるゴシップ雑誌に「事件の現場」という実際に起こった事件のその後を追うという連載があり、私の事件が特集されたことがあった。 ゴシップ雑誌らしく、当事者の気持ちやプライベートなどを完全に無視した下卑た記事だったけど、見たことのない当時の写真や詳細な様子が書かれていて、それを読んだ私は初めて知った事実の多くに膝を震わせた。 どこから手に入れたのか分からないけど、事件当時の私の顔写真も掲載されていて、そこには目も口も腫れあがって完全に顔の形が変わっている少女がいた。 それは片目の視力の低下くらいで収まったのが奇跡という程の有様で、他にもリハビリをしている由香ママの様子が掲載されていたけど、ゴシップ雑誌の本領はその先にあった。 ママ達がレスビアンのカップルであることを意地の悪い文章で飾り付け、二人がキスしている写真まで載せているのに、生みの親へのインタビューまで掲載されている。 記事の中では「産んで損した、あんなのいらなかった、もう顔も覚えてないし生死も気にしてない、事件はあの男がやったんだから関係ない」といったまともな人間とは思えない言葉の数々が羅列されていて、文字通り天地がひっくり返るような眩暈に襲われその場にへたり込んでしまった。 ただ最後に関係者の話として、ママ達は事件後すぐに私を養子にすることを弁護士に相談したとあり、その時に将来母親が障害者だと何か不都合があるかも知れないという理由で、紗英ママの養子に入れることになった記されていて、何故藤木性をなのかも分かったし、改めて二人の深い愛情に心を救われる想いになった。 こんなに深く愛されているのに自傷行為を繰り返してしまう、私は本当にどうしようもない人間だと思う。  「あっそうだ美愛、彼女とはどうなの?今度紹介してね」 「そうそう前に画像送ってもらったけど、可愛い子だよね」 私は女性を性の対象として見ているけど、それが幼少期からママ達を見ているせいかどうかは分からない。ハッキリと自覚しているのは男性に対しての恐怖心はかなり強いということだ。 対象が二次元であったり少年くらいまでは大丈夫だけど、男性性を感じる人間から触れられる事に対しては嫌悪感しか沸かない。 だから自然と自分のセクシャリティーに対しては、所謂LGBTの部類に入るんだろうなとぼんやりと思っている。 最近はこの概念もかなり細分化していて、調べていくとわけが分からなってしまう、ただノーマルな恋愛傾向を持っていないことだけは確かだった。 ママ達もそのことをよく理解しているので、愛海のことを軽い気持ちで茶化してくる。
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