5 側室教育始めました。

2/12
前へ
/86ページ
次へ
5ー2 影 「実に興味深い剣だな、イェイガーとは」 室長が俺が出来上がったポーションを小瓶につめていると話しかけてきた。 「伝説の聖剣、か」 「そんなたいしたことはないですよ、室長」 俺は、黙々と瓶詰めの作業を続けながら、室長に応じていた。室長は、そんな俺を見つめて微笑んだ。 「君も、実に、興味深い存在だ。セイ・イガー」 室長は、俺が作ったポーションの入った小瓶を1本取り上げて窓から差し込む光に透かしてみた。 「こんなに美しいポーションは初めてみた」 はい? 俺は、手を止めて室長を見上げた。 ポーションが美しい? 「ああ、すまない」 室長が笑って答えた。 「私には、鑑定能力があってな。君の作ったポーションは、品質もいいが、何より、込められた念が美しい。最高品質のポーションだ」 マジですか? 俺は、誉められて、すごく嬉しかった。 だから、つい調子に乗ってしまったのだ。 俺は、頑張った。 そして、夕暮れには、ポーションを詰める小瓶がなくなるほどの数のポーションを作っていた。 「すごいですね、セイ」 副室長も俺を誉めてくれた。 少し、呆れ気味な様な気もしたけどな。 「そんなことは、ないです」 「いや、これだけのポーションを作れるとは、すごい魔力量です」 副室長は、ほんとに感心した様子だった。 「でも、あまり無理はしないでくださいね、セイ」 「無理なんて」 俺は、にっこりと笑って見せた。 俺は、その日、研究室のみんなが一週間で作るだけの量のポーションを1人で生産してしまっていた。 だからというわけではないが、明日は、エリクサーの作り方を教えてくれるらしい。 俺は、弾むような気分で1人、後宮への帰り道をたどっていた。 ん? 1人? 俺は、思い出していた。 そういえば、俺、警備の人と一緒だった筈。 俺は、立ち止まって辺りを見回した。 「何やってんですか?セイ様」 どこからか声がして急に目の前に影が現れた。 俺は、驚きのあまり、転びそうになった。影は、俺を支えてくれた。 「も、申し訳ありません」 影は、初めて人間らしい様子を見せて、慌てて俺から身を離した。 「セイ様の玉体に触れてしまって申し訳ございません」 玉体って。 俺は、笑った。 「大袈裟な。いや、俺の方こそ、あんたのこと忘れてた。ごめん」 「いえ、気にしないでください」 影は、にっと笑った。 「ちゃんと、お側にいましたから」 コワッ! 背筋が凍りつく。 全然、気づかなかった! この人、普段、どんな仕事してる人なわけ? 「なんでしょうか?セイ様」 『いや、主は、お前が普段どんな仕事をしているのか興味があるようでな』 「いやっ!違うから!どんなこと思ってないからね。答えないでいいから!」 俺は、イェイガーの言葉を否定しようとしたが、影は、にやりと笑った。 「普段の私の仕事でございますか?それを知るものは全て」 「いや!本当に、聞きたくないから!」 コワッ! なんで、アルテミアさん、こんな人に俺の警護をさせてるわけ?
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

293人が本棚に入れています
本棚に追加