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そして十七時、PCU病棟のミーティング室にてLRミーティングが開催された。
「あいも変わらずの臨時の招集にも関わらず、みんなありがとう」
「もう、小須田先生の臨時招集には慣れっこですよ。で、今回の対象はどなたなんですか?」
「毎度の緊急招集ですが、もう安全管理室では黙認ですよ」
「俺も薬鑑を薬局長に任せて来ちゃいました」
西牟田さん、松重君、戸田山君がそれぞれ笑顔で応える。
「さっき長野さんにちょっと聞きましたけれど、今回はワインパーティーなんですって」
「ああ、そうなんだよ。で、利根川さん、筧さんの嚥下能力を改めて教えてくれるかな」
「筧さんの嚥下能力ですがRSSTもMWSTも現段階では問題はありませんが、やはり少しずつ嚥下筋の筋力低下は起きていますね」
「当日までに嚥下が落ちていたら、とろみ剤を使えるかな。西牟田さん、ワインにもとろみはつくかい?」
「はい、ワインにもとろみ剤で粘稠度を上げることは可能です。果汁を使用しているのでつきづらいですが何とかします」
「とろみ剤をつけたら、ワインの味が変わったりしないのかな」
「松重君、その通り。味が苦くなることがあるのよ。だから赤ワインなら百%のぶどうジュース、白ワインなら百%のりんごジュースを加えるの。これは栄養科で用意しますね」
「で、戸田山君、今処方されている薬はワイン飲んだ場合に影響するかな?」
「オピオイド鎮痛薬がどうかな。ただ、呼吸抑制などの中枢神経症状をしっかりと観察することにして、定期処方はこのままでいいんじゃないですかね。痛みでせっかくのパーティーを楽しめないんじゃ本末転倒ですものね」
「うん、わかった、ということで安全管理室も了承でいいかい?」
「ダメって言ってもやるでしょう。わかりました、くれぐれも羽目を外さないようにして下さいね」
院内でアルコールを摂取する。普通に考えたらありえないような話だが、このメンバーなら最善の方法でリスクを最小限に抑えて、患者さんの希望を最大限に叶えようとしてくれる。いつか私は私の能力についても話せるかもしれない。
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