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◆◇◆◇◆
「そうか、筧さんも時間なのか」
「はい、その彼女の望みがワインパーティーなんです」
電子カルテで筧さんの状態を確認し、小須田先生が指示を出し始めた。
「今日の十七時からLRミーティングを開くよ。今から言うメンバーを集めてもらえないか」
LRミーティングと略されたそれは正式には、Last Requestミーティング。患者さんの最後になるでろう望みを叶えるために開かれる臨時のミーティング。今回は院外に出るわけではないのでそれほど多くの人は必要ないのだろう。
「山下師長、言語聴覚士の利根川さん、薬剤師の戸田山君、管理栄養士の西牟田さん、安全管理室の松重君に連絡を頼むよ」
「わかりました。山下師長はそこにいらっしゃいますよ」
私が小須田先生の後ろを指差すと、小須田先生は振り返って山下師長に声をかけた。
「山下師長、今日、大高に連絡とれるかな」
大高、誰だろう? うちの病院にはその名前の職員はいないような気がするが。
「大高? ああマスターですか。大丈夫だと思いますよ」
マスター? 何のマスターなのだろう?
「じゃあ、十七時に来てと伝えてくれるかな。開店時間までには終わるから来てくれって」
開店時間?
「あの、小須田先生。その大高さんとは?」
「ああ、操ちゃんは行ったことなかったっけ。僕や師長の行きつけのワインバーのマスターなんだよ。ワインも美味しいけれど、ハギスなんかも食べられるんだよ」
ハギスが何かは分からないけれど、ワインバーの店長さんなのか。それなら、今の筧さんに適したワインを選んでもらえるのかもしれない。二人にとって、良い思い出になるパーティーになってもらいたい。
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