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夏空の下。鉄とコンクリートの廃墟に一頭の黒馬が駈けてきた。フミが慌てて降りて、錆びた柱につなぎとめる。青草が熱風に揺れる。
「講義が済んだらすぐ戻るからな」
撫でるフミの手を振り払い、いなないた。
「パロール、暴れるなって」
柱がポッキリと折れた。フミが目を丸くする。すんでのところで捕まえて、もっと頑丈そうな柱につなぎ直す。
「絶対に逃げるなよ」
念を押して、彼は廃墟の奥へ飛び込んだ。
「遅刻してすみません!!」
つぎはぎだらけの小屋にフミの大声が響いた。学生たちはぴたりとお喋りをやめた。小屋中の視線が彼に集まる。
顔を真っ赤にして、いつもの席に着く。前方には傷だらけの黒板が掲げられていた。教授の姿はなかった。友人のレターが話しかけてくる。
「フミ。君は中身、何だと思う?」
「中身?」
首をかしげるフミを、レターは小突いた。
「知らないの? あの大遺跡のこと」
フミはさっきの恥かしさも忘れて、身を乗り出した。
「詳しく教えてくれ」
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