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研究室の机に紙が広げられる。人の背丈ほどの縦横があった。見たこともない文字がびっしりと並んでいる。
「片道半日かけて階段を降りたんです。拓本を採りに」
ぼろぼろの服を翻し、助手が誇らしげに言った。教授が拓本に目を見張る。
「ありがとう……。発掘隊が扉をこじ開ける前に、急いで解読しましょう」
「はい!」
手書きの辞書を何十冊も運び込む。
フミは研究室をちらちらと眺めた。彼がこの部屋に入るのは今日が初めてだった。窓際にガラスの箱が置いてある。そこに、馬の頭くらいの大きさの、白いラッパのような道具が収められていた。部屋は煤と埃だらけなのに、ガラスの内側だけ時が止まったようにまっさらだった。
鉄棒で拓本を指しながら、教授が言った。
「この碑文には文のまとまりが百以上ありますね。同じ内容が百以上の違う言語で書かれているのでしょう。三人は、各々の文字体系を特定して下さい。私たち二人は言語を特定しながら、意味を読み取ります」
フミは耳を疑った。
「ちょ、ちょっと待って下さい。昔は言葉が何種類もあったんですか?!」
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