*開くな!!*

4/8
前へ
/8ページ
次へ
 研究室の机に紙が広げられる。人の背丈ほどの縦横があった。見たこともない文字がびっしりと並んでいる。 「片道半日かけて階段を降りたんです。拓本を採りに」  ぼろぼろの服を翻し、助手が誇らしげに言った。教授が拓本に目を見張る。 「ありがとう……。発掘隊が扉をこじ開ける前に、急いで解読しましょう」 「はい!」  手書きの辞書を何十冊も運び込む。  フミは研究室をちらちらと眺めた。彼がこの部屋に入るのは今日が初めてだった。窓際にガラスの箱が置いてある。そこに、馬の頭くらいの大きさの、白いラッパのような道具が収められていた。部屋は(すす)と埃だらけなのに、ガラスの内側だけ時が止まったようにまっさらだった。  鉄棒で拓本を指しながら、教授が言った。 「この碑文には文のまとまりが百以上ありますね。同じ内容が百以上の違う言語で書かれているのでしょう。三人は、各々の文字体系を特定して下さい。私たち二人は言語を特定しながら、意味を読み取ります」  フミは耳を疑った。 「ちょ、ちょっと待って下さい。昔は言葉が何種類もあったんですか?!」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加