0人が本棚に入れています
本棚に追加
五人がそれぞれ違う辞書を開く。
「……これは『漢字』だ」
フミが言った。
「こっちはみんな『ラテン文字』だった」
レターが呟いた。
「これは『デーバナーガリー文字』ですね」
リピが報告した。
西の空が赤く染まる。助手は震える手で辞書を見せた。ある単語を指差す。
「先生……これ、誤訳じゃありませんよね……?」
教授は深呼吸をして、言った。
「間違いありません」
三人も辞書を覗き込み、真っ青になった。すかさずリピが尋ねる。
「助手さん。発掘隊が扉を開けるのはいつですか」
「今朝、遺跡の階段を登る途中ですれ違ったので――」
「今すぐ止めなくちゃ!」
レターが叫ぶ。助手が言った。
「誰か、私と北の沙漠へ行ってくれませんか」
最初のコメントを投稿しよう!