いかほどの価値

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私は裏稼業の仕事をしています。 酷い事もそれなりにやってきた物で一番酷い時代は終わった筈なのにふとした時に人様が虫けらに見えてしまう時がある。自分はそんなに偉いのかと言われればそうではないんですが人間て奴は環境によって良くも悪くもなる。 私はその口でしてね、若いお嬢さんに話すことじゃないが、まあ…やってきましたよ。どんなことでもね。 若い時分から悪い仲間とつるんで、知り合った奴の中には更生したやつもいるが、大抵の仲間は同じ穴の狢ですよ。 私は主に女の子を扱う仕事をやってきました。随分荒稼ぎもしたが、出ていくのも多けりゃ争い事も多い。苦労しましたが、とりあえず毎日の金には困らなくなった。 バックがいれば多少の無茶は多目にみてくれますから。 でね、私の知り合いに大層酷い奴がいたんです。 名前は…鈴木でいいですか。そう、すみません。どうにも偽名だとか照れますね。 はい、緊張してます、普段と違うと駄目な性質なんですよ、知り合いなんかがいるとそうでもないんだけど。 鈴木という奴は人間の屑でした。 自分じゃあ裕福な家庭に生まれて両親のことはおかあさま、おとうさま、と呼んでいたと言いますがとてもそうじゃなかった。 パチンコ狂で金を稼ぐどころかパチンコ屋に貯金してるって寸法で。 もっとうまけりゃあサクラでもやればいいんだが、下手の横好き、豚に真珠。 私より5つ上だったけれど、もっと年がいっているように思えたな。 元はそこそこの男でした。噂じゃ伊豆あたりから流れてきたそうです。 離婚して娘が二人、孫もいてね、時々奴のボロアパートで見かけましたよ。 鈴木は汚い自転車で酒屋に行くかパチンコにいくぐらいが楽しみで後は人と仲良くしていたという噂は全く流れない。人の好意は平気で食いつく癖に今度は自分が何かしなくちゃいけないとなった瞬間に人間が変わったように怒鳴りちらすような奴です。 知り合いからは金を借りつくしたあげく、金の督促に向かえば自分は借りていない、とこう来る。なのに欲だけは突っ張っていて、私も随分泣きましたよ。友達だろう、と言っては私の店に来てはただで遊んでいくんだから。 体だけは頑丈で、酒を飲んで暴れたら手がつけられない。 背が高くって、ロシアの血が少しまじっているようだと自分で言っていましたっけ。 北海道かい、と聞けばへえへえ俺はオホーツクさ、と笑いました。 本当の素性を話すのはごく僅かです。それも嘘を話していると自分では思っている様子ではなく、真実だと思って喋るんだから性質が悪い。 訛りはなかったな、ただただあいつは最低な奴です。 それでも鈴木には何人か徒党を組む相手がいましてね。下には下がいるもんだなあ、と思いましたよ。中には賢い奴もいてね、奴が金を借りる時だけ付き合って、すっからかんになるとみれば姿をくらます。だから奴はいつでもぴいぴいと鳴いていました。私らは軽蔑とああはなりたかねえな、という気持ちで遠くから見ていた。
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