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「新入生にアルファがいるって知ってる?」
俺の言葉に、俺によく似たその顔がこちらを見た。
「…知ってるけど。…どうした急に?」
怪訝そうな顔をした侑翔が眉をひそめる。
アルファとオメガという性別のせいか、俺と侑翔は双子なのに全然体格が違った。
身長も侑翔は180ぐらいあるけど、俺は172、3しかない。
それでも平均身長が160程度のオメガ男性からしてみれば、大きい方とは言えるだろう。
アルファ男性の中では小さい方ではあるが、まぁ俺ぐらいの身長もいることはいる。
アルファ性と偽る俺からすれば、オメガにしては高めのこの身長は救いだった。
侑翔は肩幅もあり、がっちりと男らしい体格をしているのに、俺はどう頑張ってもそうはならない。
性別を偽るために筋トレも欠かさず行っているが、どれだけやっても俺の体は薄っぺらいままで。発情期で学校を休むことも多いから、重い持病を抱えている、という設定には一応なってはいるけども。
学力は努力である程度何とかなっても、体格はどうにもならないらしい。
自分で言うのも何だが、小さい頃は本当に侑翔と俺はそっくりだったのに。
自分だけ、どんどん侑翔から置いていかれているような気がした。
そろそろ俺がアルファと偽れるのも、限界かもしれない。
「なんか、凄いアルファ何だって噂されてたから。」
「…まぁ、あの北原財閥の跡取り息子だからな。うちもそこそこ大企業だとは思うけど、北原財閥とは比べ物にならない。」
鍵を開けて自分の部屋に入る侑翔に続き、部屋の中に勝手に入っても、いつものことなので侑翔は特に何も言うことはなかった。
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