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「ね、これ借りていい?」
ブレザーを脱ぎながら頷いた侑翔を見て、机に手に取った参考書を広げた。
学校以外の時間のほとんどは、勉強に費やしていた。
この寮に入る前からもそうだったけど、やっぱりあの家にいるよりは集中できていると思う。
両親に認めてもらいたかった。
侑翔に置いていかれたくなかった。
オメガに、なりたくなかった。
そんな気持ちから、勉強することをやめられないでいる。
無駄な足掻きだって、頭ではわかっているんだ。
俺がオメガである限り、両親は俺を認めてくれるはずがないし、侑翔のことを隣で支えられる存在には成り得ない。
性別だって、いくら偽っても本物のアルファにはなれない。
所詮オメガの俺は、大抵の大学や企業は門前払い。高校を卒業したら家からも追い出されて、跡取り息子である侑翔とは離れ離れ。
二年後の自分がどうなってるかなんて、想像もできない。
本当に、勉強したって何の役にも立たないんだ。
「…侑李。」
いつの間にか隣で勉強を始めていたらしい侑翔が、こちらを見つめていた。
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