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「お前、」
「だ、だって、最近抑制剤の効きが悪い気がして、」
俺は性別を偽るために、日常的に抑制剤を服用していた。
長らく抑制剤を使用していれば、当たり前だが耐性が出来て効果も薄くなってくる。
「もっと強い抑制剤に変えた方が、」
「それ以上強いものに変えたら、もっと副作用が強くなるんだぞ。」
俺の言葉を遮って侑翔がどこか苛立ったように口を開く。
「…そんなの平気だよ。」
「っ、侑李、」
「オメガだってバレることより全然マシだから。」
安心させるように笑ってみせると、侑翔はどこか傷ついたような顔をして俺を見ていた。
「侑翔…?」
強く抱き寄せられてふわりと侑翔の、海を想像させるような爽やかな香りが鼻をくすぐった。
「…ごめん。」
「え、?」
「ごめんな、侑李。」
侑翔は時々こうして辛そうな顔をする。
優しい侑翔は、いつだって俺の防波堤になってくれていた。
侑翔には、俺のせいで辛い想いをさせてばかりだ。
…俺は侑翔のお荷物にしかなれないのかな。
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