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「ご主人!いくら久しぶりのお客様だからってリオちゃんをそんなに困らせてはいけませんよ!リオちゃんだって困惑してるんですから」
ユメミさんがそんな雰囲気に気づいてくれたのか、ちゃんとツクモさんを制した。
「ああ、ごめんごめん。久しぶりですっかり舞い上がっちゃったよ、ハハハッ。」
どうやらこの会話を聞く限り、ツクモさんはユメミさんにちょっと敵わないところがあるようだった。
「遅くなってごめんなさい、リオちゃん。それにワンちゃんも。タオルをどうぞ。そして、今リビングで紅茶を準備しますね。ワンちゃんにはミルクを。えーと、ご主人は何がいいですか?」
「んーいつもので、頼むよ!」
「はい、了解です!!」
ユメミさんはあたしたちにタオルを手渡したら、どたばたとキッチンのある方向へ向かっていった。
なんだか、ユメミさんに悪いことしちゃったな。
でも、雨宿りさせてくれたことに感謝しつつ、まずはワンちゃんの髪をごしごしと拭いて、自分の髪の毛も拭いた。
すると、ツクモさんがひょいと子犬を抱き上げて手の中に収めた。
「子犬だなんて久々に見るなあ。キミの犬?」
「いえ、ちがい・・・ます。ここに一緒に迷い込んでたので」
「へえ、優しい子なんだねキミって。」
「はあ。ありがとう・・・ございます」
なんかツクモさんのテンションは久々のお客様のあたし達の登場で高まってるみたいだった。
そういうところを見てると、こんなこと言っちゃ悪いけど見目形相応って感じだった。
でも、年上なんだよね、年上・・・そう心の中に言い聞かせて、ツクモさんとの会話に臨む。
なんかそう考えるとツクモさんがちょっと怖く見えた。
お化け屋敷と呼ばれる場所に住む少年。ううん、青年。
なんていうか、本当にお化けかも、怪物かもしれないってね。
「ツクモさんは、ずっと・・・この屋敷に住んでるんですか?」
「ああ、そうだよ。おじいさんの代からずっとここさ。今はユメミと二人きりだけど・・・久しぶりのお客様が来てくれてうれしいよ。普段は普段でいろいろ応対してるんだけどね」
「あの『普段は』ってどういうことですか?」
「ああっ普段は仕事でってことだよ。気にしないで、ハハハッ。」
微妙にはぐらされた感もあるが、何の仕事してるんだか気になった。
なんか予想にもしない答えが返ってきそうだったから、質問はしなかったけれど。
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