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「ボク自身も、現実でリオさんをはっきり見たのは初めてだったから、見間違いかもとは思ったけれど。」
「やはりか・・・」
現宗は目を細めて、ツクモの話に耳を傾けた。
年代の食い違う二人の会話はどこかこの空間の時空を捻じ曲げている風にさえ、感じられた。
「本当はお前に会うつもりなんて、なかったんだがな。来てしまったよ」
現宗は複雑そうな表情を浮かべて、ツクモに語りかける。
自分と彼との間にある見えない壁を思い浮かべて、目を伏せた。
「ボクは久々にキミに会えてうれしかったよ」
そんな彼の気持ちを察したのか、ツクモはにこやかな応対を決して崩すことはなかった。
かつての、友と呼べる存在が久々にここにやってきてくれたこと。
それだけでも彼は嬉しかったのだ。友との距離が遠ざかっていたとしても。
「権兵衛がお前に頼んでいたのならわしはもう何も言わん。頼む、リオを救ってやってくれ」
「もちろんだよ現宗。リオさんはボクの親友のお孫さんだからね。何がなんでも、助けてみせるよ」
「ありがとう。そしてすまないな、いつも」
そういうと、現宗は館から去って行った。
入れ替わりに紅茶を淹れたユメミがやってきた。
お茶も飲まずに帰ってしまった現宗の姿をみて、彼女は少々落胆する。
けれど、ツクモがそれに気づいて紅茶のポットを彼女の手から取った。
「現宗はお坊さんだから・・・出したとしてもこの紅茶、合わなかったかもね」
「あら、じゃあ代わりに貴方がいただいてくれるんですの?」
主人に向かって、からかい半分で彼女は言った。
ツクモはそんなユメミに少し意地悪な笑みを浮かべて、
「ボクはさっき、トマトジュースしか飲んでないしね。キミも飲む?」
と答えた。
ユメミは「ええ」とにこやかな笑顔で頷いた。
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