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とりあえずツクモさんと話をするために、あたしとユメミさんは館の中に入りながら話をした。
夢のこと、不眠症のこと、出てくる家族のこと・・・全部。
見ず知らずの人にここまでベラベラと話してしまう自分にちょっと無用心だと思いつつも、ツクモさんの関係者であるユメミさんからも話を聞きたくて、ついつい喋ってしまった。
ユメミさんは落ち着いた表情で、あたしの話を聞いていた。
ゴンベエも同様。
一通り話し終わると、ユメミさんが口を開いた。
「夢に現れる貴方のおじい様。それっていつから見てるのかしら?」
「えーと、おじいちゃんが亡くなって・・・すぐ・・・かな。最初はおじいちゃんがなくなって悲しくて、そんな夢を見てるのかなって思ってたんですけど」
「あなたのおじい様ってさっき聞いたけど、寿命じゃなくて」
「事故です。交通事故」
少しあたしの語調が暗くなる。
あの日は雨の日だった。
いつものように普通に家に帰ろうとすると、家の前で買い物帰りのおじいちゃんがいた。
今日はスーパーで安売りのトマトが手に入ったとかそんなことを道路越しに話をして、おじいちゃんがあたしのところに駆け寄ろうとした瞬間、暴走したバイクがあたしたちの目の前に突っ込んできた。
おじいちゃんはあたしを守るためにとっさに体を目の前に突き出した。
一瞬のことだった。
バイクで暴走していた相手も、おじいちゃんも打ち所が悪かったらしく即死だった。
最初は、バイクの運転手を恨む気持ちもあった。
たった一人の肉親を失った瞬間は今でも忘れない。
でも、恨みも悲しみも時間が経つに連れ和らいでいった。
現太のおじいちゃんが自ら執り行ってくれた葬式のときに、諭してもくれた。
「辛いかもしれんが、憎しみからは何も始まらん。
相手を許さんでもいい。ただ、恨むな・・・恨んでも何にも始まらんからな。それよりも、権兵衛の魂が・・・安らげるように祈っておくれ。そして、権兵衛の分まで生きると誓っておくれ」
その言葉を忘れずに、今のあたしがあったはずなのに。
今まででおじいちゃんが夢に出てきたことはあった。
それは、昔の懐かしい思い出だったり、楽しいものだった。
けれど、今見てるあの夢は違う。
あたしを、あの世へと引きずり込もうとしてる感覚だった。
「おじいちゃんがあたしをあの世へ引きずり込もうとしてる・・・んですか?」
不安になりながら、あたしはユメミさんに尋ねた。
ユメミさんはというと、首を横に振って「違う」と答えてくれた。
「詳しくは・・・ご主人の口から聞いていただけるかしら。きっと、ご主人なら力になれると思うわ」
そういうとユメミさんはあの居間へとあたしを通してくれた。
あたしは、再びツクモさんと逢うことになった。
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