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「なっなにこれぇ!!」
「これがキミに悪夢を見せていたモノの正体さ!」
ツクモさんはそう答えると、杖をその黒影に向けた。
先ほど見せた閃光がさらに大きくなっている。
あたしは眩し過ぎて目を瞑ってしまった。
黒影の方も閃光に苦しんでいる様子が聞こえてきた。
「グガギ・・・リオ・・・グガ・・・」
黒影が苦しみながら、徐々にその形を人の形へと変えていく。
徐々に形作られるその人型にあたしは見覚えがあった。
いや、忘れるものですか。
あたしの、今までで一番大切な人だったんだもの。
何でいるのか、どうしてこんな姿なのか、聞くことすらできなかった。
眠気と同時にその名を呼ぶので精一杯だったから。
「おじいちゃん!!」
『リオ!!ううう!!』
「どうしておじいちゃんがこんな姿になってるの!どうして!!」
あたしはツクモさんに詰め寄るも、ツクモさん本人はその黒影―おじいちゃんに対して毅然とした態度を崩さなかった。
「まさか、やっぱりおじいちゃんがあたしを引きずり込もうとしていたとか!そういう話じゃ・・・!そんなわけないじゃない!!」
『リオ・・・!わしは・・・わしはそんなつもりはないぞ!!孫娘をあの世に引きずり込もうなんぞ、一片たりとも思っとらん!
誰がこんな、暗くて、寒くて、この世の地獄とも思えるところに!』
おじいちゃんは悔しそうな顔を浮かべながら、肩を落として答えていた。
でも、今おじいちゃんがいるところは暗くて、寒いところ・・・
「あの世でも・・・苦しんでるのおじいちゃん。」
『ああ、死に方が死に方だったらしいからな。無念の気持ちがわしを誘ってしまったんだろう。こんなところにな。だが、リオ・・・生者であるお前が手をつないで、ほんの少しでも生気を分けてくれればわしもお前の父さんや母さんと同じところに逝ける!』
それって、天国ってこと?嘘くさいけど。
けれど、おじいちゃんがそれで天国にいけるなら。
あたしがおじいちゃんの手をとろうとした瞬間、その手をツクモさんの左手がさえぎった。
「だめだ、死者に手を差し伸べてはね」
「えっ・・・?」
「死者の世界に引きずり込まれてしまう。特に半分引き込まれかけていた君みたいな人には」
ツクモさんはおじいちゃんに対する睨みを止めなかった。
おじいちゃんはおじいちゃんで、そんなツクモさんに対して
『大丈夫じゃ!リオ・・・わしは!お前を地獄に送ったりなどせん!!ただ、この手をつかめばわしは・・・わしは・・・この地獄から救われる!!そんなよその男の言う事など、信頼せんでいい!だから早く!!頼む、わしのことを信じてくれ!!』
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