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『おおっ、分かってくれたか・・・リオ・・・!』
おじいちゃんに手を伸ばしかけたその時、
「ワン!ワン!ワォォォォオォンン!!」
あたしの手をゴンベエが弾いた。
一生懸命うなり声をあげながらおじいちゃんを睨みつけて、そのままおじいちゃんに飛び掛ろうとした。
「ゴンベエ!!」
『なっなんだこの犬は!!俺は犬が嫌いなんだよ!!』
「俺・・・!?」
すぐさま、あたしはおじいちゃんに差し出そうとした手を引いた。
『りっリオ・・・!!なぜ、なぜおじいちゃんの・・・いや、わしの手を・・・!』
「おじいちゃんは・・・『俺』ってあたしに一度も言わなかった。そして・・・おじいちゃんは動物が大好きだったんだから!あんたは、おじいちゃんでも何でもない。あんたは・・・何者なの!!」
あたしがそうおじいちゃんと信じていたモノに問いかけると、おじいちゃんの姿が歪んだ。
そして、それはおじいちゃんではないモノに確かに変わった。
黒い、黒い悪霊としか表現できないものに。
『ははははっ!!ばれちゃ仕方がねえ!そうさ、俺はお前のジーさんでもなんでもねえよ!折角いいところまでいったのに、そこの赤服の餓鬼が何度も何度もお前との交信を邪魔しやがってだなあ・・・!まあ、そいつは、お前を巻き込まないために秘密裏に動いていたみたいだけどな!』
「っ・・・!!」
『だがな、もうそれも終わりだ!こうなったら強引にでもお前と入れ替わり、また俺が現世に還れるようにしてもらわないとなあ!』
悪霊があたしに猛烈な勢いであたしに迫ってくる。
だめ、あたし。このままじゃ・・・!!
「ワン!!」
その鳴き声とともにまばゆい光があたしの後ろから迫ってきた。
光の中には・・・ツクモさんとゴンベエとユメミさん。
まばゆい光はあたしの体を暖かく包み、一方で悪霊が苦しみ始めていた。
「ツクモさん!」
「ありがとう、信じてくれて。」
ツクモさんはそういってあたしの手を掴むとにこやかに笑ってくれた。
そして、自信に満ち溢れた表情でステッキを悪霊に向けた。
「キミにはもう後がないみたいだね!どうする?榊 ミツヨシくん!」
「サカキ・・・ミツヨシ・・・」
その名前はあたしが聞いたことのある名前だった。
というか、今でも鮮明に覚えている名前だ。
だって、その名前は・・・
「おじい様の交通事故を引き起こしたバイクの運転手でしたよね」
ユメミさんがあたしを守るかのように、その悪霊にツクモさんと共に立ちふさがった。
「ええ、おじいちゃんと同時に死んで」
『そうさ!バイクを運転していた最中、お前がやってきて・・・ジジイが立ちふさがって、俺とジジイはお陀仏さ!本当はお前も死ぬはずだったのによお』
「でも、あんたが死んだのはあんたが酒を飲んでまともな判断ができない状態で運転していたからって警察の人から聞いたわ!!おじいちゃんのせいでも、あたしのせいでもない!」
『けっ、この地獄に縛られなかったから、お前もジジイもそんなことが言えるんだ。暗くて、寒くて、毎日の重労働・・・やってらんねえ。
だから、俺は舞い戻ってきた。お前の寂しさという強い気持ちに付け込んでな』
「・・・・・・っ」
いくら、目の前にいる悪霊がおじいちゃんじゃなかったとしても心のそこにある寂しさだけは消せないんだ。
いくら、こいつを消し去ったとしても。
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