2人が本棚に入れています
本棚に追加
「確かに寂しさは消せないかもしれないけれど、
そのぽっかり空いた寂しさを埋めることは出来るよ。」
ツクモさんはそういって、笑った。
「気休めかもしれない。けれど、少しずつなら・・・」
「ワンワン!!」
「ゴンベエ・・・」
『かーーーっ!胸糞悪いぜ!この餓鬼が・・!てめえに何が分かるってんだ!地獄に縛られて、苦痛に苛まれるこの俺の!』
「何が分かるって?」
悪霊が言い切る前に、ツクモさんはとてもにこやかに、でもそれでいて威圧感のある一言を言い放った。
正直いって今までの中で一番怖い。
やっぱり、この人・・・底が深い。
「二十数年で人生を終えた君。けれど、それは君の起こした不注意からだ。今は、同情の余地もない。だって君はそのためにここにいるリオさんのたった一人の大切な家族を奪ったんだから」
『なっなにを!!』
「そんな君が、生き返ろうだなんて甘すぎるよ。
君のいた地獄は、まだまだほんのさわりの部分。
そこで根を上げている様だと、まだまだ甘いよ。ユメミ、例のものを」
「はい、ご主人」
そういうとユメミさんは懐から鍵を取り出した。
古ぼけて、幾分かさびついてしまっている鍵を。
ツクモさんがその鍵をユメミさんから受け取り宙に浮かし、そしてステッキの光を向けた。
「なっなにこれ!!」
鍵がみるみるうちに大きくなり、屋敷の奥の重々しい扉に突っ込んでいく。
カチリという音と共に、ものすごい轟音が屋敷中に響き渡った。
「ゴンベエ、リオさん伏せて!」
「えっ伏せるって」
「これからご主人があの悪霊をこの館に封じるの。
とても強い力を使うから、貴方たちも引き込まれないように何かにつかまって!」
そう、ユメミさんが言い終わる瞬間、あたし達の周りがバリアのようなものに包まれていた。
目の前には悪霊と対峙するツクモさんがいた。
そして彼は、あたしに向かってあの人懐っこい笑みを浮かべていた。
まるで、あたしに『もう、大丈夫だよ』と言ってくれているみたいに。
じゃあ、これもツクモさんがと問いかけようとした瞬間、ユメミさんがにこりと笑ってそうよと代わりに応えてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!