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「現太!」
「なんだよ!こんな時に!」
「近道しない?そこなら5分ぐらいショートカット可能!」
「えっそんな道こっちにあんのかよ」
「あるけれど、あんたが耐えられたらの話ね・・・」
「耐えられたらってなんだよ!」
「あんた、記憶から抹消してるのね。あの道」
そんな言い訳をする現太の腕を引っ張りあたしは、1回しか見たことない小道に入った。
昔ながら住んでいた町だったけれど、意外と知らない道もある。
だって、その道は昔から、子供の時から「行くな」と言われていた道だったから。
昔からずっとずっとお化け屋敷と言われていた場所だから。
遠目から見てもわかるのよ、ホント。
10数年も昔からある洋館。
雨と雷を背景にすると本当にそこらへんの遊園地のお化け屋敷より怖い場所。
時折蝙蝠が飛んでる姿も近所の住民の話から出てるから、館の主は吸血鬼なんじゃないかって思われてるくらい。
なんとなく、想像つくでしょ?
昔、まだおじいちゃんが生きていた頃、現太と好奇心半分でそこに行こうとした。
けれど、あとでおじいちゃんが血相を変えて、飛び出してきて事なきを得た。
そして二人のおじいちゃん達にこっぴどく叱られてその後言われた。
『あそこには二度と入っちゃいかん!!あの道へもだ!いいな!!お前たちが二度と帰ってこれなくなるんだからな!!』
おじいちゃん達のその言い方のおかげかなんなのか、あれ以来現太とあたしはその道に近寄らないようにした。
友達に聞くと、みんなそのように教えられてたって聞いた。
現太はおじいちゃんの言いっぷりが怖くて、それ以来重度のお化け恐怖症状態。(あたしは何故だか、平気だったけどね)
寺の息子のくせに、情けない。
けれど、禁止禁止なんて言われたら行きたくなるのが人間の性だけど、何故か近所の人たちが近寄ったことはなかった。
もうおじいちゃんの世代から不気味なお化け屋敷のイメージがついてるからかな。
そんな道にいま、あたしは入ろうとしてる。
雨だから、関係ない。ショートカットでもしないと、バイトに遅刻しちゃうし!
「ほら現太行くよ!」
そうやって屋敷の高い塀のなかにぽっかりと空いてる穴をあたしは開けた。
普段は、どうやら蔦で隠されている隠し道。
屋敷の中をつっきることができるなら、すぐにバイト先に到着できる。
これで雨にもあまり当たらずに・・・と思ったのだが。
隣にいた奴の姿がなかった。
「ぎゃあああああ」という悲鳴だけが、私の耳に入ってくる。
・・・逃げたな。
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