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「京くんが呼んだんです?ユキヒラさん」
「んー…?呼んではないかな。会えたらいいなとは思ってたけど、来てくれるとは思ってなかったよ」
「えー?そうなんすかぁ」
朝吹くんは表情ひとつ変えはしない。
まるで昨日のことなんて大したことじゃなかったみたいに、怖いほどにいつも通りだ。
「それで雪平さん。僕に何か用だった?」
「えっ」
「雪平さんが来るなんて珍しい……ってか初めてでしょ。なにか、相談したいことでも?」
違うの、朝吹くん。
あなたに無性に会いたかった。
ただ、それだけで。
「……う、ううん。なんでもないの、忘れ物して前を通ったから、少し覗いていこうと思っただけ」
「ふうん。そっか」
自惚れすぎなんだ、私が。
たった1回、深いところに触れただけ。
たった1回の戯れで、朝吹くんを知った気になってしまうなんて。
私だけが意識していることを嫌でも実感してしまい悲しくなる。
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