1.刻印

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「よそ見しないでこっち向いて」 「え、っ」 朝吹くんが下からすくい上げるように唇を重ねてくる。反射的にシャワーを持つ手が緩み、散水板があちこちを向く。 支えるように朝吹くんがシャワーヘッドを持つ私の手のひらの上に自身の手を重ねた。 「ちゃんと持ってて」 「でもっ、」 「雪平さんの身体が冷えちゃうでしょ?」 朝吹くんの優しさは絡み固めた虚無に近い。 シャワーヘッドを持つ手に力を込める。重ねていた手でそれを察した朝吹くんはその手を流れるように私の手首から腕、脇から下へ這っていき、それから。 「あっ、……ぅ、」 身を捩る私を咎めることもなくあやすこともなく、ただただキスと愛撫によって落とし込めていく。 気づけば朝吹くんの指先が、まだ誰にも触れられたことないそこへ差し込まれかけた。
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