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「だっ、めっ、待っ」
募った羞恥が破裂しかけて声を上げる。今さらだなんてどこかで気づいているのに、それでも、今だからと初心な私が悲鳴を上げずにはいられなかった。
朝吹くんは少し驚いたように瞬きを繰り返したけれど、すぐに口角をゆるりと優しく持ち上げた。いつも図書室で見る笑顔と同じ。あぁ、ずるい、そんなの。
「───初めてなんだ?」
わざとらしく耳元で囁かれ、止まっていた朝吹くんの指先がその表面を撫でた。声が漏れて、膝の力が抜ける。
そんな私に、朝吹くんは「まぁでも」と続けてから愉しそうに笑った。
「やさしくなんかしないけどね」
その声と同時に、ツプ、と朝吹くんの指先が中へ入る。
「あさっ、ぶ、きく、……」
「あーあ……だから言ったのに」
──後悔することになると思うけど、
初めに言われた言葉が脳裏を過る。意識が途切れる寸前まで、私の瞳に映る朝吹くんは微笑んでいた。
そこから先の、記憶が無い。
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