2.煙草

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「あー…もう、わかったよ」 「何がわかったのかちゃんと言える?」 「だぁっ、もー!ユキヒラさんはやめときます京くんのものです手は出しません好きにもなりません、はいはいこれでいいですか!俺は良い子なんで!」 「うん、そっか」 ──約束だよ、未夜? 身体が震えた。朝吹くんのささやきが、空気を凍らせる。未夜くんはひきつった笑みを浮かべたまま、力が抜けたように椅子に座っていた。 『言葉が持つ力と、身体に覚え込ませた記憶。どっちが、より強力だと思う?』 そう、先ほど未夜くんに対して問うていたのは朝吹くんだ。そして、私にキスをして未夜くんを黙らせた。 だからてっきり、朝吹くんが伝えたいのは後者──身体に覚え込ませた記憶の方が強力である、という事実なのかと思った。 けれど、それだけが答えなわけではないらしい。 この世のぜんぶが朝吹くんの手のひらの中で転がされている。言葉の威力と、身体に刻まれた記憶。 ふたつが混ざり合って、関わった人間すべてを毒していく。 朝吹くんは、多分────普通ではない。
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