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───突然、視力を奪われた。
鼻骨のあたりが軽くなり、視界はぼやけている。眼鏡は朝吹くんの手の中にあるみたいだ。朝吹くんの綺麗な顔すらもはっきり見えなくて、彼が今どんな表情をしているかがわからない。
何を、しているのだ、彼は。
「あ、朝吹くん、めがね……」
「うん。やっぱかわいいよね雪平さんって」
「………は、」
不意に落とされた声に固まる。かわいい……とかなんとか、聞こえたような、気がするのだけど。雨のせいで耳がおかしくなってしまったのだろうか。
何度か目を瞬かせるも、眼鏡がないと何も見えないのは変わらない。あたりはもうすっかり暗くなっているから余計に、色の識別すらも曖昧だ。
朝吹くんはどんな顔で私を見て────…
「眼鏡、無い方が好きかも」
「ひぇ……っ!?」
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