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鮮明に映り込んだ麗しい顔に心臓が跳ねる。
動揺のあまり、雨が降っていたことも同じ傘を共有していたことも忘れて勢いよく後ずさる───と。
「え」
「待って雪平さんあぶな───……」
プ─────────ッ!
「ばかやろう死にてえのかガキ!」
大きなクラクションと暴言が聞こえ、バシャバシャと水を弾いた自動車が私たちの横を過ぎていった。
鳴りやまない雨音と、朝吹くんに視力を奪われたことが相まって、後ろからくる自動車に気づけなかった。車通りが少なく、歩道がない道だったとはいえ、完全に私の不注意だった。
「…あぶなかった。雪平さん、怪我はない?」
「あ、朝吹くんっ」
自動車が急ブレーキをかけたと同時に私は朝吹くんに腕を引っ張られていたようで、ふたりして、朝吹くんに抱きしめられるような形で路肩に座り込んでいた。
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