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プロローグ
小雨が降ったその日、大切な人がいなくなってしまった。
中学生の自分には何にも出来なくて、ただ見ている事しか出来なかった。
笑顔を作り、心の中で泣いて何とかその時間が流れるのをただ待って、やっと解放されて一人でそこを出た。
雨の中を歩いて、この日の為に両親が新調したスーツはグチョグチョに濡れて、それでも濡れたまま歩いて、何処に向かっているのか分からないままでそのうち歩き疲れて、何処かのアパートの階段に座り込んだ。
(迎え…頼むか。)
携帯電話を出そうとしてない事に気が付くと呆然とした。
(番号、覚えてない。そうだ、ホテル!)
ホテルの番号も覚えてない上に、こんなとこで電話の掛け方も知らない。
怖そうなマッチョな男性が道路の向こうからこっちを見てる。
良い服着てる=金を持ってる、そんな考えが見て取れた。
(やばいな…。ここを離れても付いて来そうだし…。)
俺とした事が…そんな風に頭を抱えた瞬間、目の前に車が停まった。
(この家の人か?)
階段から立ち上がろうとした俺の頭上に、ピンクのぺんぎん柄の小さな傘が差し出されていた。
目の前に傘の持ち主と思える小さな女の子。
「おかあさん!やっぱりにほんの人だよ。」
開いたままの後部座席へ振り返り大きな声を出した。
彼女の母親にホテルの名前を言うと、同じホテルだと送って下さると言う。
普段なら拒否する所で、日本なら断固拒否。
知らない人に声を掛けられるのもあり得ない。
だけどここは外国で同じ日本人同士、と言われると怖いお兄さんもいるし、お言葉に甘えてホテルまで同乗した。
「通り過ぎようって私は言ったのよ!だけどこの子が日本人だし困ってるって聞かないから!!」
もう一人、乗っていたお姉さんと思われる女の子に言われた。
「日本じゃないから危ないって言ったのに!!」
かなりお冠だが、妹は俺に笑顔を向けていた。
お姉さんは10歳位か、妹は3歳程度に見えたがしっかりしているが小さいなという印象だった。
助手席に乗せてもらい、ホテルまで連れて来てもらったが、ずぶ濡れだったのでタクシーにはかなりお金を支払っていた。
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