プロローグ

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人間不信、人間嫌い、人見知り、男嫌い、社交性なし、ひと言で言えばこれが私。 学生時代はこれでも良かった。 友人がいなくても何とかなるし、先生という大人は一応のフォローをしてくれるし、制服という戦闘服は朝からコーディネートに悩まなくても良い楽な物で、着れば周りに溶け込める。 黒の中に白がいれば目立つが制服の中に制服がおどおどしてても目立たない。 しかし社会に出るとこれは変わる。 制服がある会社に入ったとしても通勤には毎朝、コーディネートを考える必要がある。 残念な事に私にそのスキルはない。 専門学校に入学してなんとかそこを卒業したが、就職では最終面接でことごとく落ちた。 お祈りメールが続々と届いた。 分かってる…そうだろうと思う。 だって…ろくに受け答え出来てなかったんだから。 どうして私がこんな引っ込み思案な性格になったかは追々話すとして、原因の一つに家族がある。 正確に言えば、「姉」である。 才色兼備、容姿端麗、一顧傾城、一笑千金の言葉がぴったりと当てはまる姉がいるのだ。それも四人も。 意味は調べていただけたらすぐ分かると思うが、簡単に言えば、顔良し、体良し、頭良し、性格良し、非の打ち所がない美女である。 家族は何も言わないが親戚が集まれば自分だけが血の繋がりを疑われ、ご近所では可哀想にという憐れみの目で見られ、同級生には比べられて弄られて来た。 生まれた時から人生って不平等…そう思っていたのに突然に幸運が舞い降りた。 ダメ元で受けた会社からの合格通知のメールを受信したのだ。 「やった!就職出来た!!信じられない!!」 社員50名程の小さな会社だが、ここも面接でまともに受け答えは出来ていなかった上に、周りは大卒ばかりで専門卒、それも夜学、明らかに浮いていた。 一姫はその幸運を一生に一度かもしれないと嬉しさを噛み締めた。
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