佐原家

1/2
前へ
/642ページ
次へ

佐原家

佐原家の朝は賑やかで凄まじく弱肉強食の世界。 「ねぇ!遅いって!早く洗面所どいて!」 「万希姉は化粧でしょ?部屋でしなさいよ。」 「髪の毛乾かすのよ。」 「朝シャンしたの?時間ないのに?まさか…朝帰り?」 ニヤニヤした顔の十和子(とわこ)が言うと煩いわねと声が響いた。 「万希姉、ご飯まだでしょ?準備してあるからソファで食べてよ。その間に髪乾かしてあげる。」 ひょこっと洗面所に顔を出して声が聞こえると、万希子(まきこ)十和子(とわこ)は同時に振り向いた。 「いっちゃん、おはよ!いいの?助かる〜ありがとう。」 「ううん。私は時間あるから。」 「いっちゃん、私のお弁当は?」 「十和姉のお弁当、鞄の横に置いておいたよ。十和子ちゃんの大好きな梅味の唐揚げ入れてあるからね。」 「ありがとう!!いっちゃん大好き。」 「んーーー」と二人の姉に両方から抱きしめられて、急いで!と二人を引き剥がす。 「十和ちゃんは時間、万希姉は早く乾かさないと!!」 リビングに移動すると、すれ違いで洗面所に百都子(もとこ)が行く。 「いっちゃんのおかげで助かったぁ。忙しい朝の時間に狭い洗面所で取り合いとか勘弁だよねぇ。」 クスクス笑いながら、朝食を済ませて歯磨きをするらしい。 四姉妹は毎日、朝から戦争みたいだ。 佐原家は父と母、28歳を筆頭に2歳差の上から四姉妹、そこから3歳下のいっちゃんと呼ばれる自分とさらに3歳下に弟の寿文(としふみ)がいる。
/642ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4235人が本棚に入れています
本棚に追加