長女、万希子の目

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 長女、万希子の目

「いっちゃんありがとう!」 ごちそうさまと言うと同時に、セット出来たよという声が背後から聞こえて、コンパクトを鞄から出して髪型を見た。 立ち上がり、ドライヤーを手にしていた妹の一姫をぎゅっと抱きしめる。 「お姉ちゃん、苦しい。」 「んーお姉ちゃんの愛だよぉ〜!ちゅっ!!」 ほっぺにキスをして、体を離し、顔を見つめた。 (今日も可愛い!!食べちゃいたい位、可愛い!) 「なぁに?お姉ちゃん時間だよ?」 ジッと見られて多分、私が何を考えているか分かったんだと思う、少し膨れた頬で時間を口にした。 (こんなとこも可愛い。) 堪らん…一番下の妹の可愛さにやられている自覚はある。 「じゃあ行ってきます!いっちゃんお弁当ありがとう。いつもごめんね?」 「ううん、作るの嫌いじゃないし。それ位しか出来ないから。」 俯いて言う一姫がまた可愛いが、一姫は自分に自信がない。 それは姉として一姫を可愛がっている者として悲しいが、その責任の一端は多分、私たち四人の姉にある。 それに気付いた時はもう遅かった。 一姫は自分に自信を失くし、殻に閉じ籠り、人との付き合いを恐れる人になってしまっていた。 可愛がり過ぎて一姫の周りの事には私は目がいっていなかった。 守ってあげられなかった、その気持ちが一姫のしたい様にさせてあげようという気持ちに変わった。 母がパートに出ている事もあり、小さな頃から家の手伝いは一番していた子だったが、高校生から家族分のお弁当と後片付け、夕食の買い出しと夕飯作り、後片付けは一姫が全て一人でやっていた。 中学生の頃は母と二人で、その時間が落ち着く時間だった様で姉妹は邪魔をしない様にしていた。 高校生になると一人で、母は助かると洗濯や掃除と分担する様になり、金、土曜の夕食だけは母がと決めたらしい。
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