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『ばぁちゃん!』
思わず口にした言葉に一斉に視線が突き刺さる。
ゴォッという風と共に
月明りですら闇へと飲み込まれてしまった。
熱せられた大地を冷やす急激な雷雨。
暑さをしのぐために避難した仏間で、
どうやら眠っていたらしい。
吹き抜ける風は、ほんの少しだけひんやりした。
何気なく視界に入った仏壇は、
いつもとかわらず鈍い光を放っている。
飾られた祖父と祖母の遺影は、
少しだけ微笑んでいるようにも見えた。
「彼岸でも一緒にいるんだな…」
そんなことをひとり呟き、
改めて仏壇に手を合わせる。
白檀の香りは、さっきの夢と同じ香り。
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