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『こんなところに居たの?』
特別用事はないが、
一応わたしを探していたかのような、
やや気の抜けた女の声が背後から聞こえた。
『もうすぐ####だから』
振り返ったときにはすでに居なかったが、
肝心なところは聞こえなかった。
おそらく夕飯かなにかだろう。
ふと茶の間に向かう足が止まる。
当たり前の日常を待つことより、
あの声はいったい誰なんだろう。
この家にはもう、わたししか居ないというのに…。
夕立後の湿度を帯びた風は、
すでに全身の汗を冷やし体温を奪っている。
『モウスグ####ダカラ』
未婚のわたしが彼岸の女と結ばれていく。
結婚なんてしたら終わり。
墓場のようなものだ。
そんなことを言っていたのは誰だったか。
実際に今、墓場である。
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