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結婚なんてしたら終わり。
墓場のようなものだ。
そんなことを言っていたのは誰だったか。
実際に今、墓場である。
辺りにみられる光は、ほぼ月明り。
パッと見ると罰当たりなようだが、
まるで割り当てられた席のように、
整然と並ぶ墓石に、みな腰かけている。
声が聞こえるわけではないが、
ざわついていた雰囲気が不意に《シン…》となる。
墓地の入り口からは、
青白い光がゆらゆらと揺れながら向かってくる。
どこからともなく上がった感嘆の吐息。
どうやら主役が入場したようだ。
人型となった青白い光は、
年老いた夫婦となってゆっくりと近づいてくる。
キャンドルサービスでもするように、
ひとつひとつの墓石に淡い光が灯る。
品のある白檀の香り。
近づくにつれて鮮明になるその顔は…。
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