助手席

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 大学生の日常会話なんてこの程度の中身の無いものが殆どだ。これに猥談が加われば、飲み会一回分の会話は成立する。数年後、社会人になる人間とはとても思えない。 「そういえば、お前彼氏とか出来た?」 「はぁ?いるわけないじゃん!あんたふざけてんの!」 「はいはい、そうですね。こんなことでムキにならないでくれよ。だけどよぉ、俺はともかくお前は花の女子大生だろ?男の俺と違って、若い女性は無条件にモテるよね?」 「あんたさあ、そういう発言はあたし以外の女にしない方がいいよ。まあ、した場合は浮気認定させてもらうけど。デリカシーの無さを売りにするのはラブコメの主人公だけだからね」  礼子はそう言うと、画面越しに缶ビールを一口飲んだ。  “恋人”。俺と礼子の関係。高校一年の頃から付き合っている。  しかし、俺と礼子は同じ地区に住み、小中高と同じ部活に所属していた世間一般でいう“幼馴染”でもあるのだ。そのため、恋人同士というよりは仲の良い親戚同士といったところだろうか。
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