助手席

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「そう言うあんたこそ彼女の一人でも出来たんでしょうね?」  やり返しやがったな。まあ、俺が言えたことではないか……。そんなところも可愛くみえなくもないし───。 「お前もかなり目が悪くなったようだな。目の前にいる男が女を侍らしているようにみえるのか?」 「私に上から目線で交際相手の有無を聞いてくる男が、まさか自分の彼氏で尚且つ童貞なわけないよね?」 「童貞かどうかは問題じゃねえよ」  本当に曲がりなりにも交際している男女の会話なのだろうか、といつも思う。まあ、童貞なのは事実なのだが……。ただ、未だに付き合い続けている以上、適切な距離感を保てているのだろう。 「すみません、もしかしたら素人童貞でしたか?」  追い打ちをかけてきやがった。 「本当に次から次へと俺への悪口が出てくるな、お前は。」 「え、可愛い彼女と会話出来てうれしくないの~?」  そう言うと、礼子は口を押さえながらクスクス笑っていた。酒の飲みすぎだと言おうとしたが、酒に酔って真っ赤に変わった自分の手を見て思いとどまった。
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