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「ありがとうございました! またお越しください」
丁寧にラッピングした商品を、井波優花は桜があしらわれた季節限定の紙袋に入れてお客様に手渡した。笑みを浮かべながら軽くお辞儀をしてお客様を見送った。不意に、お腹の音がぐぅと小さく音を立てた。
「おなかすいた……って、もうこんな時間」
レジカウンターの内側に隠してあるデジタル時計で時間を確認するとちょうどお昼休憩の五分前を指していた。平日の昼間はあまり客足も多くないため、シフトに入る人数も少ない。そういうときのためにデパートの社員が店を手伝ってくれていた。今日は二人とも早番で、あとは夕方から大学生の子が一人シフトに入ってくれる予定だ。
「井波さん、先にお昼行ってもらっても大丈夫よ」
「あ、でも、斉藤さんも早番でしたよね?」
「今の時間って食堂混んでるじゃない? それに私はお弁当だからいいけど、早くいかないと食べるもの無くなるわよ」
「そう、ですか。それじゃあお先にいただきますね」
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