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食堂の入り口で日替わりメニューの看板を見つけた優花は何にしようかと悩み始めた。料理が出来ないわけではないが、何より食堂は安くてメニューが豊富だ。日替わりランチにパスタ、ラーメン、お寿司など飽きることはない。いつでも温かいものが食べられるとなればわざわざ自分でお弁当を作る理由もなく、ランチはこの食堂で取ることが多かった。メニューを決めた優花はトレーを持ってパスタコーナーに向かった。
「お、井波ちゃん、いらっしゃい」
「えっと、しらすパスタでサラダセットもお願いします」
「はいよ。しらす大盛にしとくね」
看板に書いてあったオススメメニューのしらすパスタを注文すると、厨房のおじさんが愛想良く笑ってくれた。優花は食堂でもおいしそうとか、おいしかったです、とかわざわざ感想を伝えに来るので食堂で働く人の中でも顔が割れていた。待っている間にサラダとスープをトレーに乗せて、どこの座席に座ろうかときょろきょろ辺りを見渡した。いつも窓の外を一望出来る席に座るのだが今はそこには行きたくない理由があった。
「お待たせ。いつも一緒にいる人ならあそこの席、座ってるよ」
「え、あ……」
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