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「花火」
「なに、雪」
「私、全部思い出したよ」
「・・・そう」
「ううん。忘れてたんじゃなくて、忘れたふりしてたのかもね」
「・・・そう」
「だからね」
「次は私が、花火を助ける」
消灯時間もとうに過ぎた深夜。
病院内はすっかり寝静まっている。
「雪、よく合鍵なんて持ってたね」
「まぁねー。花火って意外と真面目だから、こんな事出来ないでしょ」
くすくす笑いながら鍵を開ける。
無人の屋上に夜風が吹き抜ける。
人気のない場所に建つ精神病棟から見える景色は、寂しくて、本当に静かだ。
「花火見てー。星が見えるー」
「綺麗だね」
空を見ながらくるくる回る。
まるで2人で踊っているように。
「花火」
「ん?」
「ありがとね」
「何、急に」
「今まで言えなかったから、今までの分言うね」
「・・・私は何もしてない」
「そんな事ない」
「・・・雪を守れなかった」
「そんな事ない」
「・・・結局、雪に全部背負わせて」
「花火」
回るのを止める。
「私達は一心同体。私の罪も、花火の後悔も、全部一緒に連れて行くよ」
フェンスをよじ登り、縁に立つ。
「わー、高ーい!」
「怖い?」
「んー?全然」
「嘘つけ」
「あははっ」
「2人だから、大丈夫だよ」
「バイバイって言うのは、やだなー」
「じゃあ何て言う?」
「それじゃあ・・・」
「おやすみ、花火」
「おやすみ、雪」
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