まどろむ暁、滲んで消える。

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 透き通るような青空の下。  墓前に四ツ谷が佇んでいる。  「私も虐待されてたの。父に」  線香の煙が揺れる。  「母はいなくて、父に朝から晩まで殴られた。・・・父が事故で亡くなるまで」  供えた花が、四ツ谷を見つめる。  「あなたを助けたいと言ったのは本心よ。   ・・・あなたは、あなた達は、私と同じようにはなって欲しくなかった」  1ヶ月前、泣きながら長瀬が電話をかけてきて、四ツ谷は急いで病棟へ向かった。  即死だった。    川島雪の遺体を前に、長瀬は泣き崩れていた。  四ツ谷は悲しさよりも、まるで安らかに眠るような表情に救われたような気がした。
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