まどろむ暁、滲んで消える。

2/13
前へ
/13ページ
次へ
 「はい、花火ちゃん。大きく息を吸ってー」  「すぅーーー」  「吐いてー」  「はぁーーー」  「花火タコみたいだった笑」  「雪うるさい。邪魔すんな」  検診を受ける花火に雪がちょっかいを出し、花火に叱られる。  これもいつもの光景なのか、医師や看護師達もクスクス笑う。  「雪ちゃん、ちょっかい出しちゃ駄目よ。はい花火ちゃん、問題無いね」  そう言って聴診器を外す女性医師・長瀬。  慣れたように2人をあやす。  「何ともないって。良かったね、花火」  「当たり前じゃん。日頃の行いが良いから」  「はぁー?人をパシりにする奴がー?」  「はいはい2人とも、喧嘩しないの!   あ、雪ちゃん。ちょっと話したい事があるから残っててくれる?」  開かれた窓からゆるやかな風が入る。  天井も床も白く、太陽光が差し込むと反射して眩しい。  「最近はどう?」  「うーん・・・変わらない」  「まだ、夜は眠れないまま?」  「うん・・・」  そう答えると、雪は困ったように笑う。  「まだ、怖い夢を見るの?」  「・・・うん」  「同じ夢?」  「うん・・・黒い影みたいなものが、追いかけてきて・・・」  「飲み込まれる?」  「・・・」  雪は無言で頷く。  長瀬はそれ以上聞くのをやめた。  しかし俯いていた雪が顔を上げる。  「でも大丈夫!私には、花火がいるから」  そう言って、雪はニッと笑った。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加