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「はい、花火ちゃん。大きく息を吸ってー」
「すぅーーー」
「吐いてー」
「はぁーーー」
「花火タコみたいだった笑」
「雪うるさい。邪魔すんな」
検診を受ける花火に雪がちょっかいを出し、花火に叱られる。
これもいつもの光景なのか、医師や看護師達もクスクス笑う。
「雪ちゃん、ちょっかい出しちゃ駄目よ。はい花火ちゃん、問題無いね」
そう言って聴診器を外す女性医師・長瀬。
慣れたように2人をあやす。
「何ともないって。良かったね、花火」
「当たり前じゃん。日頃の行いが良いから」
「はぁー?人をパシりにする奴がー?」
「はいはい2人とも、喧嘩しないの!
あ、雪ちゃん。ちょっと話したい事があるから残っててくれる?」
開かれた窓からゆるやかな風が入る。
天井も床も白く、太陽光が差し込むと反射して眩しい。
「最近はどう?」
「うーん・・・変わらない」
「まだ、夜は眠れないまま?」
「うん・・・」
そう答えると、雪は困ったように笑う。
「まだ、怖い夢を見るの?」
「・・・うん」
「同じ夢?」
「うん・・・黒い影みたいなものが、追いかけてきて・・・」
「飲み込まれる?」
「・・・」
雪は無言で頷く。
長瀬はそれ以上聞くのをやめた。
しかし俯いていた雪が顔を上げる。
「でも大丈夫!私には、花火がいるから」
そう言って、雪はニッと笑った。
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