まどろむ暁、滲んで消える。

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 「カウンセラー?」  「うん。私の不眠症を治してくれるって」  「・・・ふーん」  「あ。双子の妹の花火です。ほら花火、ご挨拶」  「・・・どーも」  「初めまして、花火さん」  ベッドの上で訝しげに見る花火に、四ツ谷は微笑む。  「じゃあ雪さん。行きましょうか」  「えっ。どこに行くの?」  「カウンセリング室を借りてるから、そこで雪さんと色々お話しをするの」  「だから花火はお留守番しててねー」  雪が笑顔で手を振るが、花火が不満そうに睨む。    扉が閉まる。  「では雪さん。色々聞かせてね」  「よろしくお願いしますっ」  白い壁と机。雪と四ツ谷が向かい合って座っている。  「夜眠れなくなったのは、いつから?」  「えーっと・・・1年くらい前かな」  「それまでは眠れてた?」  「うん、多分」  「どうして眠れなくなっちゃったの?」    「どうしてって・・・」  雪は考えた。  頭の中に黒いもやのようなものがかかっている。  「・・・影が・・・」  「影?」  「影が・・・襲ってくるから・・・」  「眠ろうとすると、影が襲ってくるの?」  雪は黙って頷く。四ツ谷は雪を見据える。  「・・・その影は何か、知ってるの?」  四ツ谷が尋ねる。  雪は考えるが、黒いもやがどんどん広がり、頭痛がしてきた。  「・・・知らない・・・わからない・・・」  頭を押さえる雪。  四ツ谷はしばらく黙っていたが、小さく息を吐く。  「・・・ありがとう雪さん。今日はここまでにしましょう」  そう言って四ツ谷は雪の肩に手を置く。  雪が四ツ谷に目を向けると、優しく微笑んだ。  「またお話し、聞かせてね」  雪は小さく頷いたが、頭の中のもやは不穏に揺れた。
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