まどろむ暁、滲んで消える。

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 「この俳優また不倫してんじゃん」  「あんだけ叩かれたのにまだ懲りてないのー?」  そう言いながら小さなテレビを眺めている。  「ねー雪。なんか飲み物買ってきて」  「えー?やだーめんどくさーい。花火が買ってきてよ」  「私一応、入院患者なんですけど」  「うわ、ずるい。・・・もぉー」  溜め息をつきながら、雪と呼ばれた少女がベッドの縁から立ち上がる。  「何がいいの?」  「コーラ!」  「好きだねー、コーラ」  そう笑いながら病室の扉を開く。  花火が手を振る。雪も手を振り返す。  病室を出て歩きだすと、看護師の女性とすれ違う。  「あら雪ちゃん。お出かけ?」  「うん。花火にジュース買ってこいって言われた」  そうぼやくと、看護師はクスッと笑った。  「本当に仲良しねぇ」  「だって双子だし。たった2人の家族だもん」  そう言って笑う雪。  雪と花火は、この病院とはもう長い付き合いになる。
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