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2.どこかで見たような光景
「うきゅ?」
気がついたら狐乃音は、狭い箱のようなものの中にいた。
「え? え?」
箱の前は、ドアのようになっていた。はてさて、一体ここはどこなのだろうか?
それに、何故だか辺りはざわざわと騒がしい。
「な、何が始まるのですか?」
狐乃音が不安な思いを呟くと、右隣から声が聞こえた。……否。正確には、上の方からだ。
「あぁ? そんなん決まってんだろ」
馬のような耳をした長身の美人が、いつの間にか、上から覗きこんでいたのだ。
そして彼女はおもむろに、狐乃音に白い歯を見せニカっと笑いながら、勇ましく言った。グッドサインを決めながら。
「第三次大戦だ!」
「え?」
まるで、わけがわからない答えだ。
しかし、落ちついて考えている暇は、なかった。
「うきゅっ!?」
次の瞬間。がしゃんっと大きな音をたてながら、前方のドアが開いた。
開けた視界には、緑色の、芝生が敷き詰められた道。
向こうの方には、とても大きな観客席と、それを埋め尽くす大群衆が見える。
そうかと思えば、ずどどどどと、すさまじい勢いで、横一列にいた誰もが駆けだしていた。
場の雰囲気に飲まれ、狐乃音も同じように駆け始めてしまった。
「うきゅううううううっ!?」
横一列になってスタート。
(も、もしかしてこれは、お馬さんがする、駆けっこなのでは!?)
狐乃音がそう思っていると、どこからか、アナウンサーのような男性の声が聞こえてきた。とても早口だけど、明瞭な声で聞き取りやすい。
『各馬一斉にスタートを切りました! 先頭からコノネマックススピード、続いてマグロマックイーン、ブレッドシャワー、ヤマトスカーレット、ノイジースズカ、トウカイコウテイ、アグネスダクオン、ハッピーミート、スペツナズウィーク、トーカクジョーダン、ナツクラクラと続いています。最後尾にはいつも通りのシルバーシップ!』
「うきゅっ!? だだだ、誰がこのねまっくすすぴーどですか!? それにそれに、私はお馬さんじゃなくて狐……」
「はっはっはっ! 細けぇこたぁいーんだよ!」
先程のお姉さんが走りながら、狐乃音の問いに答えてくれた。
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