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何が気に入らない?
俺達は付き合って3年で同棲して2年になった。
「男のケジメ」とやらを考えて俺は指輪を買いに行く。
宝飾店の店員は色々進めてくれるが彼女のイメージを考えて俺は「アレキサンドライト」という石を選択した。
下手なダイヤより高価だったが彼女の為にその指輪を買いホテルのレストランを予約する。
俺の彼女は少し変わった子だと俺は思ういわゆる天邪鬼な性格かもしれない。
でも彼女が好きだ。
料理をさせればプロも裸足の腕前なのに料理は嫌いだし掃除や洗濯も出来るだけ自分でやらなくてもいいように手配する。
なのに綺麗好きだったりするから天邪鬼で器用で不器用な人だと思っている。
仕事もしていて俺より稼ぐしそれを鼻にかけたりはしない。
俺が風邪をひいた時は仕事を休み側にいてくれたり彼女の不器用な優しさを時々感じると日々の素直じゃない所でさえ可愛く思うのだから俺も単純かもしれない。
一生この人とこんな風にお互い不器用に過ごしたいなんて思うから不思議なものだ。
今日は付き合って3年目の記念日だがおそらく彼女は覚えていないだろう。
俺の誕生日ですら怪しいような女性だから・・・。
それでも俺は、今日の夜の予定を開けてもらいお互いの会社の中間地点で待ち合わせをしてホテルのレストランへ向かう。
普通の恋人同士のように手を繋ぎレストランへ俺は今からすでに緊張している。
「どうしたの?レストランなんて珍しいね。」
言葉とは裏腹に花のように笑う彼女はとても可愛い。
「今日で付き合って3年だからね。」
「そうね、そうよね。」
覚えていたのかそうでないのかは考えないようにした。
ワンピースを着て髪をアップにしていつもよりお洒落をしている彼女も少しは今日を意識しているのかも知れない。
その日のコースの料理は本当は覚えているべきなのだろうが俺は緊張で覚えていない。
「あのさ・・。」
食事を終えてデザートとコーヒーが出てきた時に思いっきり息を吸い込み
「あのな・・。」
話し出そうとした時に彼女は
「別れたくないよ・・。」
は??
なんでだ?
俯き加減で彼女は小さな声でつぶやいた。
「そうじゃないよ・・留美ちゃん。」
「へっ?違うの別れたいって言われるかと。」
なんでそうなる!と言いかけたが真っ赤な目に涙をいっぱいためている彼女を見て愛しいと思う。
「違うよ・・コレ受け取って。」
小さなビロードの箱を彼女の目の前で開ける。
そこには用意したプラチナ台のアレキサンドライトの指輪。
「あのな、俺と結婚してくれないか?」
おれはさっきの彼女の様子からもちろん喜んでOKしてもらえると信じて疑わなかった。
な・の・に・・・・
「一生一緒にいたい。でも結婚は嫌だ。」
「へっ??何が気に入らない?」
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