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「ただいまぁ」
マンションの玄関を開けて、誰にでもなく言う。
「おかえり!」
あ。
珍しく母がもう仕事から帰って来ている。
「早かったね」
「うん。残業なしで上がれた」
母一人、娘一人。
母は、私が小学校2年の時に離婚してから、医療機器メーカーで事務をしている。昔は看護師だった事もあるらしい。
「ご飯、もうちょっとで出来るから」
いつも、母が遅い時は私が、母が早く帰れれば母が、適当に家事をこなす。
制服から部屋着に着替えてキッチンに戻ると、母がご飯をお茶碗につけてくれていた。
「柚、土曜日だけど」
ご飯茶碗をテーブルに置きながら、母が話し始める。
「何? デート?」
「いい?」
「いいよ、別に部活だし」
母は、ここ一年ほど、時々デートに行く。
紹介されたことは無いけど、会社で知り合った人らしい。
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