前夜祭

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指示を待ちながら、小声でおしゃべりする。 「柚、オケ部の練習してた?」 「うん、ちょっとだけ。その前に委員長に会って、ここに荷物運んでたから」 龍之介は?と聞きそうになって口をつぐんだ。 「あ、そう」 「そう。午後リハーサルだから」 聞きたいことを我慢しているからか、胃がキュッとする。 「柚?」 どうして、私に関係ないのに気になるのか。 リハーサルに集中しなくちゃいけないのに。 「なに?」 龍之介の顔を見る自信がなくって、ステージを見たまま答えた。 「なんか、俺より柚の方が緊張してんじゃない?」 「え?」 緊張? リハで? 「さっきもなんか、入口で深呼吸してたし。そんな、心配しなくても、俺、大丈夫だから」 「うん。分かってる」 龍之介がそう勘違いしたんなら、それでいい。
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