1105人が本棚に入れています
本棚に追加
指示を待ちながら、小声でおしゃべりする。
「柚、オケ部の練習してた?」
「うん、ちょっとだけ。その前に委員長に会って、ここに荷物運んでたから」
龍之介は?と聞きそうになって口をつぐんだ。
「あ、そう」
「そう。午後リハーサルだから」
聞きたいことを我慢しているからか、胃がキュッとする。
「柚?」
どうして、私に関係ないのに気になるのか。
リハーサルに集中しなくちゃいけないのに。
「なに?」
龍之介の顔を見る自信がなくって、ステージを見たまま答えた。
「なんか、俺より柚の方が緊張してんじゃない?」
「え?」
緊張? リハで?
「さっきもなんか、入口で深呼吸してたし。そんな、心配しなくても、俺、大丈夫だから」
「うん。分かってる」
龍之介がそう勘違いしたんなら、それでいい。
最初のコメントを投稿しよう!