前夜祭

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「……柚、オケ部の部長が好きなんだろ?」 逃げるようにその場を去ろうとしたら、龍之介に、いきなりそう低い落ち着いた声で言われて、どうしようもなく動揺した。 「うん。だから、ごめんって」 関係ないのに、聞くことじゃなかった。 泣くような事でもない。 なのに、ポロッと涙が溢れた。 瞬きのせいだ。 泣くつもりなんかなかった。 「わ、ごめん。訳、分かんないね。ごめん」 最悪。 さっと指先で涙を拭いて、誤魔化す。 「だから、さっさと告って来いって言ったのに」 え? 「なにそれ?」 「明日で三年、部活、最後だろ? さっさと付き合うなり、振られるなり、してきてよ」 そう言って、龍之介はいつものように、クシャっと私の髪を荒らした。
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